学生の頃からの念願だった二日間の研修を終え、今は充実した気持ちでいっぱいであると同時に、今までの自分のいたらなさを痛感し、目の前に広がる鍼灸の世界の奥深さにしばし立ち尽くしている状態です。以前より先生の鍼のすばらしさは理解しているつもりでしたが、臨床の場で目の前でその変化を体験 させていただいた今回の研修は、それほどまでに私にとって衝撃的でした。
研修中は驚きの連続でした。まず、吉川先生の鍼が数年前の研究会に参加していたころからさらに進化を遂げているのを目の当たりにしたこと。開穴に鍼をテープでとめるだけで反応をとるということ自体が革新的であるとは思うのですが、それがさらにすすみ王不留行の種子をテープでとめることで同様の効果を挙げていらっしゃいました。もちろん鍼を使用することの方が多いようでしたが、この方法だとより刺激量の低い方法で効果が出せるのだろうと考えました。これも、経絡を動かすということに対する吉川先生の飽くなき探求心の結果なのだと思います。
また、経絡を動かすスピードを上げるために耳穴を駆使されていたことも印象的でした。例えば他の反応は消失したのに心経の補の反応だけ残っているときは、同側の耳の心穴に王不留行を貼ります。すると、それまでくすぐったく感じていた少海の反応がすぐさま消失する、といった具合です。これは先生の出されたDVDにもその様子が収録されていますが、目の前でそれを確認するとその効果のシャープさに驚くばかりでした。「人体はフラクタル」だという先生の言葉が深く納得できた瞬間でした。
そして申脈や陽綱といった、私がいままで重視してこなかった経穴の重要さも教わりました。今回はたまたまこの二穴の効用を実感できる症例を複数見学できたのですが、このようなかくれた名穴(!?)はもっともっとあるのだろうと思います。
また何よりも今回勉強になったのは、直接吉川先生をモデルとして、陰陽太極鍼の実技をさせていただけたことでした。脈の見方から、腹診の取り方、切経の仕方、さぐっていく順序などなど、基本的なところからすべて教えてくださいました。まさしく、「手取り足取り」といった具合です。研修での実技指導は弟子に任せるという先生も多いと聞きますが、このように自らモデルとなり、貴重な休憩時間を割いて下さるということは、なかなか他ではないことのように思いま す。そういった意味でも大変有り難く感じました。
今回驚いたこと、新たに勉強になったことは、このように挙げていくと数えきれません。 ですが、5年前の研究会で初めて東方鍼灸院に足を踏み入れて以来変わらないのは、ここに来ると必ず、「自分が選んだ鍼灸という道に間違いはないのだ」と確認させていただけるということです。もちろんそれを本当にものにできるかどうかは今後の自分の努力次第なのですが、東方鍼灸院に来ると、このことを何度でも再確認させていただけます。(2012年)
1976年創業。初代院長、吉川正子が開発した「陰陽太極鍼」の施術を行っています。鍼を刺さない、皮膚にやさしい施術です。肩こり、腰痛だけでなく、眼科疾患や様々な症状に対応しています。
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